ショーペンハウアー先生、ぱないっす

幸福とは何なのか。

子どもと関るとふと考えてしまいますねえ。

 

「この子にとっての幸福はなんだろう」

あるいは、「自分にとって、本当の幸福ってなんだろう・・・」

なんてことをぐるぐると考えていたら、こんな本を見つけました。

 

 

幸福について (光文社古典新訳文庫)

幸福について (光文社古典新訳文庫)

 

 

 

「幸福について」

おお、ど直球・・・

これは、哲学者ショーペンハウアー先生が、自著「意思と表象の世界」の注釈本の中に納められた、処世術やら教訓が書き殴られたもので、「意思と表象の世界」で、「うわー、無理。意味わからん」となった方も全然読めるものかと・・・。

 

中身は結構ライトで辛辣。ショーペンハウアー先生の独断と偏見が散りばめられており、なかなかパンクでございます。

 

例えば・・・

全体としてみれば、精神が貧弱で総じて卑俗であればあるほど、群れたがることがわかる。換言すれば、この世では「独りでいるか」、「他者と共にいるか」のどちらかを選択するしかない。あらゆる人間の中で最も群れたがるのは黒人だと言われるが、彼らは知的な面で断然、劣っている。フランスの新聞「ル・コメルス」における北アメリカの報告によれば、黒人はお互いのだんご鼻の黒い顔をいくら眺めても見飽きないため、たいそう狭い空間でも、自由農民も奴隷も入り乱れて、大勢が一緒に過ごせるのだという。

 

いや、すごくないですか??

換言すれば、この世では「独りでいるか」、「他者と共にいるか」のどちらかを選択するしかない。って、だいぶ極端な気が・・・。

そして、黒人についてくだりは、最後の方ただの悪口だし。

 

もうね、この本ではショーペンハウアー先生が、とにかく他者と群れて、ウェイウェイやってるパリピをディスりまくるんですよ。当時、社交界で流行りまくっているトランプの賭け事についても

彼らは取り交わすべき、思想がないためにトランプカードを取り交わし、互いに金を巻き上げようとしている。

  などと、ぐさりと刺してますな。

ま、これもただの「言いがかりじゃんw」とも思えるけど、ハウアー先生の論としては、こんなのがありまして・・・

 

人の幸福を左右するものは次の3つ

⒈その人は何者であるか

 広義における人品、人柄、個性、人間性、健康、力、美、気質、特性、知性、それらを磨くこと

⒉その人は何を持っているか

 あらゆる意味における所有物、財産

⒊その人はいかなるイメージ、表象・印象を与えるか

 他人の目にどう映るか。他者の評価、名誉と地位と名声

 

なんだけど・・・そもそも「本人が満足しているかどうか」に関わってくるよね。

2、3はどれだけ満たしても満たされないし、ちょっとしたことで失いやすい、不安定なものなんだから、1を大事にしていこうよ。

というのが、ハウアー先生の言い分。

1というものを精神的な感受能力という言葉に置き換えたり、知的好奇心って置き換えたり、内面の富なんてい言ってますな。知的な活動全般のことを指しているのかな・・・

 

で、幸福というものの対立項として出てくるのが「苦痛」と「退屈」。

貧乏だったり、自分がひどい扱いを受けているときは苦痛を感じ、

逆に経済的に安定して、満たされ、日々平穏だとしても退屈を感じる。

 

この2つから逃れるために、行動していると、「半ば獣めいた人間の幸福と快の程度を上回ることができない」としているわけですな。

でも、1を大事にしている人。精神的能力が高い人は、最低限、生きるために必要なものがあれば、精神的喜びを感じることができる。と。

「知的な生き物である人間の側面を大事にしていこうぜ!そこに幸福になる鍵があるぜ!」というのが一貫してハウアー先生の主張。

 

だから、トランプ遊びで退屈紛らわせているやつらは大嫌い。

 

ざっくりし過ぎているかもしれないけど、こんな感じです。

 

 

 

これは訳者さんのセンスなんだろうけど、言葉のチョイスが絶妙で、他にも結構刺さることがいっぱいあるし、ハッとさせられることもたくさん。

意識高い系の人の思いを凝縮したかのような感じ。

200年以上前にもこういうことを考えていた人がいたこと自体が面白い。